生きづらいと感じてきたHSPの私 ~視点を変えればすべてが新境地~ 第4章-3
前章: 生きづらいと感じてきたHSPの私 ~視点を変えればすべてが新境地~ 第4章-2
4.初めて拠点長に
4-3
・揺らぐ自信と久々の一人ぼっち
・リーダーに相談の日々
・深夜の逃走で浮気疑惑
・初場所での大仕事
・拠点長初場所での思い出
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4. はじめて拠点長に
4-3
・揺らぐ自信と久々の一人ぼっち
車の事故の一件から拠点長としての自信は益々揺らぎました。
職員の気持が見えていない。と言うか関心が向いていない。
他人がお世辞で言ったか本音で言ったか、そんなことは敏感に察するのに。
心に余裕がない。悶々としていました。
その頃、家庭は子供もできて明るく楽しい雰囲気になりました。
私にとって唯一の癒される場所、くつろげる場所。
子供も益々かわいい盛り。
そして妻は第2子を妊娠。「この子にも兄弟ができる」何か感慨深い。
男の子か女の子かは生まれた時のお楽しみ。どちらでもいいように名前も考え始めたり。
いよいよ本格的な家庭を持った実感。2児のお父さん。がんばらないと。
揺らぐ自信と奮い立たせようとする自分。
そうこうしてるうちにあっという間に出産間近となりました。
1人目の出産の時、ずい分難産だったので今度は妻の実家のある大阪に帰って出産することに。
長男も幼稚園を休ませ、予定日の1~2カ月前から実家に帰らせました。
久々の一人ぼっち。寂しさと少し解放感も。長期間の一人は長男出産の時以来。5年ぶり。
一人になって感じたこと、癒されるとは言え、家族にも神経を使ってたんだということ。
HSP気質の人間は神経の休まる一人の時間も必要ってこと。
仕事で頭の中はいっぱいいっぱいだったのでしょう。
・リーダーに相談の日々
着任から半年以上が経ち、当初気おくれしていたリーダーたちとようやく気楽に話せるようになってきました。
リーダー5人は仲良くやってくれていました。その中の2人は特に同年代で仲良し。私より10才年上。2人とも超美人でノリのいいお姉さん的存在。仕事もできる。
この2人のリーダーと私はよく話すようになりました。
家に帰っても一人なので夜遅くまで会社に居残って話しました。
いつもなら早く一人になりたいのに珍しいことです。
一緒に飲みにも行きました。
雑談とか仕事の相談とかいろいろ。少し気が楽になっていました。
日頃、職員と面談と称して仕事の進捗状況を確認する。自分では会話してるつもりでもただただ一方的に確認しているに過ぎない。「もっとやれ」と暗に詰め寄っているに過ぎない。理想を掲げて着任したものの、現状は一人よがりな拠点経営。
やはり話すことは大事だと痛感しました。いい経験です。
前任のすごい先輩の影もようやく薄まったように感じていました。
とは言え、2人のリーダーからも雑談の中で批判めいたことを言われると笑いながらも傷つくのでした。
・深夜の逃走で浮気疑惑
第2子は男児でした。次男。無事に生まれてくれました。
1人目は帝王切開でしたが今回は自然分娩で出産。嬉しいことです。
妻はまたがんばってくれました。
一度土日で大阪に会いに帰った際、母子は隔離されていて残念ながら窓越しの対面。
でも動くその小さな姿に感動しました。
妻が実家での日々を終えて子供二人を連れて帰ってきました。一人の日々も終わり。
また新たな家族も増えてにぎやか。やっぱり嬉しい。
育児の日々も再び始まりました。育児は家族にとってやはり大変な事業です。
多くはまた妻が担ってくれました。
ただ長男は私が出勤時に幼稚園へ送ることに。
出勤前は寝不足と緊張で相変わらずピリピリしているものの、子どもとはいえ、つかの間の男同士の時間。
かけがえのない時間でした。
そしてあっという間に初場所2年目。
楽しい家庭生活に暗雲がたちこめる出来事が起こります。
ある日、支社の会議の後に飲み会があり列車で行きました。
車なら2時間の距離、列車でも1時間半かかるので、帰りが夜遅くなりました。
妻には事前に帰る時間を伝えていたのです。
駅と会社と家はそれぞれ1kmほどの距離。
一度会社に戻りました。
一人のよく話しているリーダーが仕事をしながら待っていてくれました。
「遅くまでご苦労様」といいながらまた話が弾みました。
一人の頃の癖です。
一緒に会社を閉めて出た時、すでに深夜。
数百メートル離れたところに妻の姿がありました。
心配して見にきたのでしょう。
何となくビックリして、とっさに私は何を思ったか違う方向へ走って逃げてしまったのです。
深夜だから浮気を疑われるのではないかと恐れたのです。何もないのに。
心の奥底でそのリーダーにかっこいいなあと憧れがありました。
たぶんそんなこともあってやましく思えたのかもしれません。
もっとおばちゃんなら逃げてなかったかも。
とにかく逃げてしまった。妻から離れていたとは言え、こちらを見ていたように見えました。
帰るのが怖い。なぜ逃げたのか後悔しました。
何もなかったように少しして家に帰りました。
妻はすでにいる。
妻も恐る恐る話し出しました。
「さっき会社の近くにいたやんな?」
「えっ? 会社は寄ったけど、見間違い違う?」
それ以上はお互い話しませんでした。
決して切り抜けた訳ではない。うそにうそを重ねてもう今更「実は…」とは言えない。
逃げたことの説明がつかなくなるから。
翌日からもそのことはお互いに触れず。言わない怖さ。言われない怖さ。
私は勝手に怯えていました。何となく感じる重い微妙な空気。そんなことには人一倍敏感。
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・初場所での大仕事
将来に向けていい拠点にしていくこと。このことはずっと思っています。
拠点長になって、研修なんかをするのも割と嫌いではないと気付きました。
ただ現実は、ノルマをしないとまた何を言われるか分からない恐怖と常に葛藤していました。
相変わらず毎週・毎月の支社長への報告や拠点長団の会長への報告は嫌で嫌でしょうがないことでした。できた時でも怒鳴られるような恐れを抱いている。家に帰っても頭から離れません。トラウマです。
だから根底にいい拠点にしたいと思いつつも、数字を上げないとヤバい、という方が勝っていました。
自ずと人を増やしたり育てたりはおざなりになりがちで数字を追うことに必死。
でもそれは職員には伝わるのでしょう。返って数字は詰まらないことの方が多くなりました。
自然体でいられない。常に焦っている。
ただ拠点の中ではリーダーとよく話すようになってからいろいろな情報も入ってくるようになりました。心の居場所もできてきた気がしていました。
新人の育成を担うもう一人のリーダーの悪いうわさがどんどん入ってきます。
人はいいけど仕事はせず、チームの新人の足を引っ張ることばかりしている、と。
私自身も見ていてまずいなと思っていました。
何度か本人とも話しましたが改善はみられず。
チーム内の職員もそのリーダーの文句だらけ。ついには「辞めます」と言ってくる。
数字を追うことだけで焦ってる中にこんな問題が次々出たらたまったもんではありません。
朝の出勤も益々気が重い。一人でどこか遠くに行きたい気分。
よく話す2人のリーダーからも相談を持ち掛けられていました。
「このままではまずいですよ。あの人をリーダーから外さないとチーム全員辞めますよ」
拠点長初場所2年目も後半。
拠点長は2~3年で異動が通例です。
おそらく最後の1年。数字は伸び悩んでるけど何とかこの拠点が将来につながるようなたたずまいにして出たい。多くの職員の期待を背負ってリーダーを交代させる決心をしました。自分にとっては大仕事です。
なぜなら厄介なことにこのリーダーは拠点大好き。リーダーでいることが大好き。拠点の中で幅を利かせていました。
そんな人をリーダーから外すことは新人拠点長の私だと一筋縄にはいきません。
修羅場になるのは目に見えている。
ものすごいプレッシャーを感じていました。
その頃、例の支社部長は来なくなっていました。代わりに支社の法人関係の仕事をしている元拠点長のマネージャーがたまに支援に来てくれていました。
この人は大ベテランで面白く、私を立ててくれました。
神経をすり減らす私もこの人には心を開いていました。上司でもないので余計気楽だったのでしょう。
その人にリーダー問題を相談しました。
するとアドバイスしてくれました。
支社長には自分から通しといてやる。
他のリーダーもいる場で話しなさい。
他のリーダーには事前に話を通しておきなさい。
違う議題でリーダーを集めて、そっと話題を変えなさい。
まずはその相手に尋ねなさい。頭ごなしはいけない。
厳しいことを伝える時ほど優しく、優しく。
支社長を避けてる私としては通してもらえればそれはそれで助かると思いました。
言われるままに場を設けました。
「こんなことで困ってるんだけどどう思うか」「こんな話が出てるんだけどどう思うか」
ほんとにそっと柔らかく尋ねるように切り出しました。そのリーダーは全リーダーの前で困った表情で答えてました。
リーダーを下りてもらおうと思っていると柔らかく伝えました。
何とかその場は大荒れすることもなく終わりました。
そのリーダーは、私の苦手な以前拠点の朝礼によく来ていた人材育成担当の支社部長とは仲良し。
このまま済むとは思ってませんでしたが、思った通り、その仲良しの支社部長に直訴に行ったのです。
その支社部長も「自分は聞いていない」とかなりの剣幕で私に電話してきました。
私も腹を決めて事情を話し、どうしてもリーダーを代えたいと言い張りました。
しかし支社部長は支社長に直訴。なぜ自分を通さずにことが進んでるのかと。
間に入ってくれていたマネージャーは支社長に直で伝えていたのです。
私は拠点が遠く離れていることをいいことに電話一本すら誰にもせずに事を進めてしまいました。
上司を避けるが故に組織での筋を通すことを怠ってしまったのです。
二転三転もしましたがリーダー交代には成功しました。
しかし、結果支社長の逆鱗に触れ「お前は組織というものをわかっていないっ」と怒鳴られました。かなりショックでした。避けてきたことで起こした自業自得のできごと。
年度末も近くなり、異動内示の日。本来はもうひと場所同じ支社で拠点長の方向だったものが、リーダー人事と引き換えに支社から追い出されることになりました。
普通に転勤ではあるものの、内情は飛ばされたってことは明らかでした。
ただリーダー交代の件で拠点の他の職員からは拍手喝采。喜ばれました。
長い間のみんなの課題を解決してくれたと。
リーダーを外した職員もできる限り手厚く処遇したので何とかしこりも残さずに済みました。
ものすごいストレスとプレッシャーでしたが、自分なりに何かやっと大きな仕事をしたという自負はありました。
そして年度末、年間の売上げ目標がかかっていました。あと少し足りない。
年度末近くなると支社の年間売上目標達成がかかっているため、拠点長団の中の同調圧力は並大抵のものではありません。
自身の拠点が切れば、自ずと他の拠点がその分を被らないと支社が達成できません。
ものすごいプレッシャーです。この時期と販売強化月間はたまらなく毎日がしんどいのです。
職員方も自分の拠点にプライドがあります。全員が成績の俗に言う「自爆」のような無茶なことをしそうになっていました。
一瞬、甘えようかと思いがよぎりましたが止めました。
拠点をよくしたい。それなのに犠牲を払うのか。本末転倒ではないか。自問自答しました。
いつも数字に追われて切った時の報告などで戦々恐々としてきた私。
年間の売上げ目標額は切ってしまいました。愛社精神をもつリーダーにはショック。
気を落とすリーダーもいました。
何とも後味が悪い。
でもかなり葛藤しましたが正しい選択をしたと思っています。
切った後悔もあるけど、職員の善意の暴走を止めた誇りもある。
そしてリーダー交代という大仕事も成し遂げた。
飛ばされることにはなったけれど複雑な思いでした。
・拠点長初場所での思い出
拠点長になって矢面に立つことの精神的なプレッシャーの大きさをまざまざと痛感してきました。
毎日とにかく憂鬱。常に不安。
形から入るから自分を作る。自分を作るから本当の自分を隠す。
当時の自分は気付いてない。ただただ憂鬱。
厳しくするというと朝礼で大声で凄んでみたり。どこか的外れ。
でも職員たちは暖かかった。
職員たちとは仲良くなれました。見抜かれていたのかみんなが大らかだったのか。
振り返るといろいろなことがありました。
職員が辞めていくこともしばしば。出入りの多い業界です。
いつも忙しくしてる時や〆切でピリピリしてるような時に限ってある職員が「話があります」と言ってくるのです。
ビクッときます。サラッと流せないかなと「何?」と軽めに聞いても答えない。
やむを得ず応接ソファに行くと案の定「辞めたいんです」
話を聞いたり、引き止めたり、結局時間を取られます。ヘトヘト。
で、ひとまず辞める話は保留。この時間の分残業は延びる。
それが定期的に来るのです。何とも粘着質な感じがしんどい。
辞めたいと言ってくる職員は忙しい時を狙ったように来ることは多々ありましたが、この職員は常に。
もう辞めさせてもいいかなと思ったこともありました。
また言ってきました。最後にと思って私が好きな自己啓発本を手渡しました。
「よかったら読んでみて。きっとまた違った考えも浮かぶかもしれんから」
実際に読んだかどうかは分かりません。でもピタッと辞めると言ってこなくなりました。
その数年後、私にその職員から電話がありました。
「ご無沙汰してます」から始まりました。
何とその職員、あれから奮起し、優績者の職層になり、更にリーダーになったというのです。
私に「本をもらって気持ちが切り変わりました。必死で止めてもらったお陰でリーダーにまでなりました」と伝えるための電話でした。
拠点長冥利に尽きる、って気持ちになったのを鮮明に覚えています。嬉しかったなぁ。
話は戻って、いろいろな思い出の中、転勤の日が来ました。拠点から出る時、職員たち全員で見送り。感激です。
転勤の時はある意味、唯一数字からも人間関係のしがらみからも離れられる瞬間です。
そんな少しゆとりのある余韻に浸りながら去りました。
ただ今度は雪深い日本海側。妻との微妙な空気は引きずったまま。
今度はどんなできごとが待ち受けているのか。
子供たちも乗せて夕方から、拠点長初場所の地をあとにしました。
次章: 生きづらいと感じてきたHSPの私 ~視点を変えればすべてが新境地~ 第5章-1
■シリーズ目次
生きづらいと感じてきたHSPの私 ~視点を変えればすべてが新境地~(はじめに)
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